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ノッター・ファイルWeb目録

1. 「ノッター・ファイル」

 「ノッター・ファイル(”The Notter File”)は、第二次世界大戦中における米国の戦後構想、とりわけ日本やドイツの占領計画や関連する戦後処理計画の策定過程とその後の変遷を辿る際のその有力な資料として知られている。同コレクションは、米国立公文書館(NARA)所蔵のRecord Group(RG) 59 “General Records of the Department of State”内に収録されている文書群(Entries 495-505)であり、その名称は当時国務省内に設置されていた「戦後外交政策諮問委員会(Advisory Committee on Post-War Foreign Policy)」の事務局長であったハリー・A・ノッター(Harley A. Notter)にちなんで名付けられたものである。
 現在国内外の図書が所蔵している同文書群のマイクロ資料(フィッシュ形態)は、CIS社(現在はProQuest社に吸収)により1987年に”Post World War II Foreign Policy Planning: State Department Records of Harley A. Notter, 1939-1945″として市販化されたものである。資料の詳細な解説に関しては、同マイクロ資料を所蔵している国立国会図書館憲政資料室のWebページ[https://rnavi.ndl.go.jp/kensei/entry/YE5-21.php]で確認することができる。また、ProQuest社のサイトから同マイクロ資料のBibliographyのPDF版を入手することも可能である(ただし、落丁あり)[http://cisupa.proquest.com/ksc_assets/catalog/2964.pdf]。
 ノッター・ファイルは、国内外研究者の間でその存在が知られ、資料的価値の高さが指摘される一方、その量が膨大であることに加え、マイクロ資料の形態であるため、国内研究者の間では十分に活用されてこなかった(数少ない研究のひとつに五百旗頭真『米国の日本占領政策』[上下2巻、中央公論社、1985年]がある)。そこで、日本学術振興会の科学研究費助成事業・基盤研究(A)「日米特殊関係による東アジア地域再編の政治経済史研究」[https://kaken.nii.ac.jp/d/p/23243026.ja.html]では、ノッター・ファイルのマイクロ資料を購入し、より資料を利用しやすくするためデジタル化を実施した。デジタル化は、研究テーマに合わせて日本・ドイツ・イタリア関連のものを中心に行い、名古屋大学法情報研究センター(JaLII)の協力を得て独自のWeb目録(HTMLファイル)を作成した。当ページでは、この貴重な資料の存在がより多くの研究者の目に止まり、広く活用されることを企図してWeb目録を公開している。

2. Web目録の利用方法

 このWeb目録は、”Post World War II Foreign Policy Planning: State Department Records of Harley A. Notter, 1939-1945″のBibliographyおよびIndexに記載されている書誌情報をベースに作成したものである。
 目録ページは、”Japan”、”Germany”、”Italy”、および左記3つを複合した”All”の4つに分かれており、それぞれのタグをクリックすると各ページが開く。”Japan”、”Germany”、”Italy”の各ページは、”Biblio.”と”Chronological”に分かれている。

①Bibliography
 ”Bibliography”は、目次のSection 1-11毎に並んでおり、該当する資料がある場合にはタイトルがリンク表示(青色)になっており、Section名の隣にはそのSection内における該当資料を表記してある。リンク表示をクリックすると下位のサブタイトル情報が表示され、さらに表示されたサブタイトルをクリックすると資料タイトルが表示される仕組みになっている。
②Chronological Order
 ”Chronological Order”は、タイトル情報および年月日を一覧化し、それを並べ替えて表示すことが可能になっている。「ファイル名(タイトル)」および「日付(年月日)」の横にあるボタンをクリックすると並べ替えができる。(なお、日付のデータはすべて目録データに基づくものであり、表内で空白になっている部分は目録でも空欄になっている。)

なお、”All”のページは、”Japan”、” Germany “、”Italy”内の各資料の時系列をわかりやすく表示するために作成したものであり、”Chronological”のみの構成となっている。資料名は、”Japan”、” Germany “、”Italy”毎に色分けして表示している。

3. マイクロ資料の利用に関して

 このWeb目録で表示される資料の本文は、名古屋大学法学図書室所蔵のマイクロフィッシュで閲覧することができる[http://nagoya-m-opac.nul.nagoya-u.ac.jp/webopac/YB03106402]。また、国立国会図書館憲政資料室や全国の大学図書館でも同資料を所蔵している[http://ci.nii.ac.jp/ncid/BA12911461]。ご利用を希望される方は、各図書館にお問い合わせ下さい。

4. Web目録作成のコンセプト

 目録の存在は、資料の利用において必要不可欠なものである。最近は、目録の電子化も進み、OPACに代表されるように、キーワード検索を使って目的の資料にアクセスできるようになっていることが多い。キーワードを適切に指定することで、自分が知らない資料にもアクセスすることができる。
 しかし、キーワード検索によって得られた結果は、情報の中において「点」でしかないため、その資料が全体の中でどのように位置づけられるのかを知ることは容易ではない。奥行きのある研究を進めるためには、資料をどのような流れの中で見るかという「視座」を提供する仕組みが必要である。資料を流れの中で把握することで、コンテキストを生み出すことが可能となる。
 また、キーワード検索によって得られる結果は、入力するキーワードに大きく依存する。そのため、キーワードをうまく指定できなければ、目的の資料をうまく見つけることができないという問題点もある。ある資料を検索結果として得られたとしても、それに関連する他の資料は、改めて検索しなければならない。キーワード検索による方法は、自分の知識と発想の範囲内の結果しか得られないため、その範囲外の有用な資料を知らずに研究を進めることにつながりかねない*1。
本ウェブサイトの”Bibliography”と”Chronological Order”という資料の提供方法は、①資料を適切に位置づけて利用することと、②関連する他の資料を見つけることに主眼を置いている。

“Bibliography”について
 目録は、本来、資料を種類ごとに分類して提供している。そのため、OPACではなく目録の体裁で見ることにより、キーワードに依存することなく、同種類に分類されている資料から関連資料を探し出すことができる。
 目録内での分類が単一階層であれば、紙媒体をはじめとする静的な情報提供でも問題がない。しかし、分類が複数階層になっている場合、静的な情報提供では、自分がどの階層の情報を閲覧しているのか、全体との関係を把握しにくくなる。本ウェブサイトで取り上げるノッター・ファイルも目録が複数階層になっており、冊子体の目録を使っていると、全体のどの部分に位置づけられる資料かを把握しにくい。
 本ウェブサイトでは、クリックで開閉するアコーディオンメニューを採用することで、全体の資料体系や階層構造を把握しながら、資料にアクセスできるようになっている。全体の資料体系を把握することで、個々の資料の適切な利用につながる。また、資料相互の体系的な関係に着目することが容易になり、関連する他の資料を見つけることに役立つと考えられる。

“Chronological Order”について
 資料の時系列は、資料を利用する際に非常に重要である。目録によっては、同分類内の配列が、出版年や作成日に基いて時系列に並べられている場合がある。OPACでも、ほとんどのものが、検索結果を時系列に表示する機能を備えている。しかし、目録の場合には同一体系内での時系列に限られるし、OPACも検索結果内の時系列に限られる。全資料を横断的に時系列で把握することはできない。
 全資料を横断的に時系列で表示することで、資料の分類体系からはわからない、資料相互の関係を見つけ出すことが可能となる。すなわち、全く異なる分類体系に属す資料でも、同時期に作られたことを通じて、関連情報を見つけ出すことが可能となる。
 横断的な時系列表示は、俯瞰的な資料把握にも効果的である。本ウェブサイトでは、枢軸国である日本・ドイツ・イタリアの資料を取り上げており、その3カ国の資料をすべてマージした時系列表を提供している。時系列表の背景色を、日本=白、ドイツ=青、イタリア=黄色で表示している。資料の作成日付は、主として1941年から始まるが、当初はドイツに関する事項が中心であり、その後にイタリアが加わり、日本に関する資料が多く登場し始めるのは、1943年5月ころからであることが、時系列表からわかる。このような俯瞰的な資料把握は、資料の適切な利用に貢献するし、それ自体が興味深い発見の対象になる可能性もある。

*1大手検索サイトであるGoogleのサジェスト機能や、大手通販サイトであるAmazonのレコメンド機能など、検索を補助する有効な仕組みは存在する。これらは、大量のユーザー行動を分析することで実現されている。しかし、研究という少数のユーザーしか想定されない場面では、このような仕組みは有効に機能しない。
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