明治民法(現行民法旧規定)仏語訳書籍の画像公開

1. 明治民法について

現行の民法典は、前3編(財産法部分)が明治29年(1896年)に公布され、後2編(家族法部分)が明治31年(1898年)に追加されて、明治31年(1898年)7月16日から施行されました(*1)。

*1 明治29年4月27日法律第89号(財産法部分:第1編 総則、第2編 物権、第3編 債権)明治31年6月21日法律第9号(家族法部分:第4編 親族、第5編 相続)

旧民法と区別するため、明治民法と呼ばれています。
戦後、日本国憲法の施行に伴って、昭和22年(1947年)に家族法部分が全部改正され(法律第222号)、平成16年(2004年)には、口語化を中心とした財産法部分の全部改正(法律第147号)が行われたため、公布時の条文は、全て旧規定となっていますが、財産法の規定の多くは、現在でも、実質的に当時の内容を受け継いでいます。
明治民法は、明治29年法律第89号で旧民法財産法部分(明治23年法律第28号)の全部を改正し、明治31年法律第9号で同家族法部分(明治23年法律第98号)の全部を改正する形で公布されました。そのため、民法典は、それら2本の法律から成るものとするのが一般的な理解でしたが、平成16年改正のさいに、題名・目次についても改正がなされ、形式も整理されたことから、現在では、明治29年法律第89号で公布された1本の法律で、明治31年法律第9号は、家族法部分を追加した一部改正法だと考えられています(*2)。

*2 六法全書平成11年版(有斐閣、1999年)2239頁、2281頁、六法全書平成17年版(有斐閣、2005年)3049頁、3094頁。なお、広中俊雄「民法史研究余滴2 民法改正立法の過誤」法律時報71巻6号(1999年)120頁、同「民法史研究余滴4 民法改正立法の過誤(再論)――政府見解の誤謬について」法律時報72巻3号(1999年)93頁参照。

2. 明治民法(現行民法旧規定)仏語訳書籍について

(1) 『仏訳日本帝国民法 第1編乃至第3編』

“Code civil de l’Empire du Japon : Livres I, II & III (Dispostions générales–Droit réels–Droit de créance) Promulgués le 28 avril 1896. Traduction par I. Motons [et] M. Tomii(丸善株式会社, 1900)”(『仏訳日本帝国民法 第1編乃至第3編』)は、明治民法起草者の一人である富井政章と、外交官で、法典調査会主査委員を務め、後に外務大臣となる本野一郎による明治民法財産法部分の仏語訳書籍です。(*3)。
翻訳者としての記載はありませんが、協力者として、アペール(G. Appert)の名が挙げられています。扉に、”Promulgués le 28 avril 1896″とありますが、明治29年法律第89号の公布日は4月27日です。

*3 本書の解題として、金山直樹「パリの〈同窓会〉―『仏訳日本民法典(前三編)』の復刻に際して― 」青葉通信第4号(新青出版、1997年。復刻本栞)があります。

(2) 『仏訳日本帝国民法 第4編及第5編』

“Code civil de l’Empire du Japon : Livres IV et V : famille et successions traduction par L.H. Loenholm et Jules Adam(Maruya, 1902)”(『仏訳日本帝国民法 第4編及第5編』)は、帝国大学法科大学でドイツ法の講義を担当していたレーンホルム(L. Loenholm)とフランスの外交官アダム(J. Adam)による明治民法家族法部分の仏語訳書籍です。
レーンホルムは、民法の英語訳、独語訳のほか、商法、刑法等についても、仏語・独語・英語への翻訳を行っています。
なお、本書の画像作成には、国立大学法人弘前大学附属図書館の所蔵本を利用させていただきました(*4)。

*4 弘前大学附属図書館本館 323//L824 ID:92279765。本書の画像作成と公開について、弘前大学附属図書館から格段のご配慮をいただきました。厚く御礼を申し上げます。
画像作成に使用した書籍は、扉の献詞から、アダムが第1編乃至第3編の翻訳者の一人である本野一郎へ贈ったものではないかと思われますが、この書籍が旧制弘前高等学校図書館(現弘前大学附属図書館)に所蔵されることになった経緯は、今のところ不明です。

3. 画像の公開について

明治期の法典編纂事業は、条約改正交渉と密接に結びついており、主要法典の編纂にあわせて、外国語への翻訳が行われました。
法情報研究センター(JaLII)では、さまざまな時期の法令データとその翻訳を収集、データ化し、分析することを通じて、法令翻訳辞書の開発・改良の研究をしており、今回、民法について、その仏語訳の文献をデータ化しました。
現行民法典の公布時における翻訳である上記文献は、箕作麟祥によるナポレオン法典の翻訳から旧民法編纂への流れを受け継ぐもので、翻訳辞書の研究だけでなく、民法の研究者にとって非常に有用なものであることから、作成した画像データを見ていただけるようにします。
法情報研究センター(JaLII)では、旧民法の仏語訳書籍(エクスポゼ)についても、画像データを公開しています。

公開した画像データは、PDF形式で、編別のファイルに分割してあります。

4. 検索結果のご利用について

 再利用の際は、出典の表記をお願いします。
 検索画像の改変、商業目的での利用は、ご遠慮ください。

5.その他

なお、本件画像データの作成には、
  科学研究費基盤研究(A) 課題番号20240024
  「漢字文化圏法令データベースの構築を通した比較法研究基盤の確立」(平成20年-22年度)
に基づく補助金の一部を使用しました。

2011年5月26日

名古屋大学大学院法学研究科
附属法情報研究センター(JaLII)

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