明治26年(1893年)1月1日に施行が予定されていましたが、明治25年(1892年)第3回帝国議会で延期が決定され(*2)、現行の民法典及びその改正法の公布に伴って、明治29年(1896年)4月27日に明治23年法律第28号で公布された部分が、明治31年(1898年)6月21日に明治23年法律第98号で公布された部分が、それぞれ未施行のまま廃止されました(この民法は、現行の民法と区別するため、一般に「旧民法」と呼ばれます)。
施行はされなかったものの、現行民法にも強い影響があったことが指摘され、民法分野の重要な研究対象とされています。
*1 明治23年4月21日法律第28号(財産法部分:財産編・財産取得編第1章~第12章・債権担保編・証拠編)
明治23年10月7日法律第98号(家族法部分:財産取得編第13章~第15章・人事編)
*2 明治25年11月24日法律第8号で、明治29年12月31日まで施行を延期することとされましたが、
家族法部分については、編纂が間に合わなかったため、明治29年12月29日法律第94号で、
明治31年6月30日までの再延期が定められました。
明治23年法律第28号で公布された部分は、ボアソナード(G. Boissonade)によって起草され(そのため、この部分は「ボアソナード民法」と呼ばれています)、法律第98号で公布された部分は日本人委員によって起草されました。
*3 第2巻:財産編理由書、第3巻:財産取得編理由書、第4巻:債権担保編・証拠編理由書。この理由書部分は、城数馬・森順正によって日本語に翻訳されました。翻訳された理由書は浄書され、糸綴じ製本されたものが、法務図書館に保管されています(法務図書館所蔵『民法理由書 一~十二』(請求記号:XB300 B1-14) →カラー画像)。
どの巻にも著者についての記載がなく、Traduction officielle(公定訳)と表示されていますが、ボアソナードの執筆によるものと考えられており、同じ著者による草案段階での注釈書(「プロジェ」と略称されます)に対して、「エクスポゼ」と呼ばれています(*4)。
*4 エクスポゼについては、小林一俊「民法理由書などについての一つの小メモ」亜細亜法学9巻1号(1974年)
83頁以下(同『錯誤法の研究(増補版)』(酒井書店、1997年)607頁以下に収録)、
池田真朗「民法四六七条におけるボアソナードの復権」手塚豊教授退職記念論文集編集委員会(編)
『手塚豊教授退職記念論文集 明治法制史政治史の諸問題』(慶応通信、1977年)1039頁〔1074頁〕
(同『債権譲渡の研究(増補2版)』(弘文堂、2004年)10頁〔45頁〕以下、同『ボワソナードとその民法』(慶応義塾大学出版会、2011年)191頁〔228頁〕以下に収録)、前田達明・七戸克彦「『民法理由書』について」ボワソナード民法典研究会(編)『民法理由書 第1巻 財産編物権部(ボワソナード民法典資料集成 第2期 後期4 公布・後史)』(雄松堂出版、2001年)19頁以下に、解説があります。(『民法理由書 第1巻』には、上記小林論文・池田論文も収録されています)
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2011年3月30日
名古屋大学大学院法学研究科
附属法情報研究センター(JaLII)