旧民法理由書(邦訳)のカラー画像公開

1.法務図書館所蔵『民法理由書 一~十二』について

法務図書館所蔵『民法理由書 一~十二』(請求記号:XB300 B1-14)は、ボアソナードがフランス語で執筆した
『日本帝国民法(附理由書)』(エクスポゼ) Code civil de l’Empire du Japon accompagne d’un éxpose des motifs. Traduction Officielle Torme 1-4(Kokubunsha,1891)(*1)
の立法理由書部分(第2巻~第4巻)の邦訳です(*2)(*3)。
法務図書館に所蔵されている写本が、現在、存在が確認されている唯一のものとされています。
同書は、墨で浄書された和紙が、袋綴じ(文字の書かれた面を外側にして中央で二つに折った紙を重ね、折り目の反対側を糸などで綴じて表紙を付ける方法)で製本されたもので、現在は、12冊に製本されていますが、扉(表紙)は3種類あり、細かく分けると25冊になります。当初25冊だったものが、12冊に合冊されたものと思われます。
翻訳は、1892年(明治25年)から1893年(明治26年)にかけて行われたと推測され、扉(表紙)の記載から確認できる翻訳者は、城数馬・森順正(*4)です。扉(表紙)に翻訳者名の記載がないものがありますが、いずれも森順正の翻訳と考えられています(*5)。

*1 第1巻: 仏語条文、第2巻~第4巻: 仏語立法理由書。旧民法とエクスポゼについては、こちらを参照(同書全4巻は、名古屋大学の蔵書から作成した画像を公開しています)。

*2 本書については、小林一俊「民法理由書などについての一つの小メモ」亜細亜法学9巻1号(1974年)83頁以下(同『錯誤法の研究(増補版)』(酒井書店、1997年)607頁以下に収録)、池田真朗「民法四六七条におけるボアソナードの復権」手塚豊教授退職記念論文集編集委員会(編)『手塚豊教授退職記念論文集 明治法制史政治史の諸問題』(慶応通信、1977年)1039頁〔1074頁〕(同『債権譲渡の研究(増補2版)』(弘文堂、2004年)10頁〔45頁〕以下、同『ボワソナードとその民法』(慶応義塾大学出版会、2011年)191頁〔228頁〕以下に収録)、前田達明・七戸克彦「『民法理由書』について」ボワソナード民法典研究会(編)『民法理由書 第1巻 財産編物権部(ボワソナード民法典資料集成 第2期 後期4 公布・後史)』(雄松堂出版、2001年)19頁以下に、解説・解題があります(『民法理由書 第1巻』には、上記小林論文・池田論文も収録されています)。 本稿の記述も、主にこれらの文献によっています。

*3 本書と仏文理由書(エクスポゼ)については、いくつかの相違する点があり、翻訳者が、ボアソナードに問合せをすることや協議して修正した旨の注記が見られることから、厳密にいうと単なる翻訳ではないことが指摘されています(前掲前田・七戸「『民法理由書』について」(*1)34頁以下)

*4 城数馬:法科大学(現・東京大学法学部)卒業、司法省参事官補で、法律取調事務兼勤となり、後に大審院を経て代言人になりました。法科大学在学中から東京法学校(現・法政大学)の講師を務めています。財産編の総則と物権部、債権担保編、証拠編の翻訳を担当しました。
   森順正:ボワソナードの書生兼通訳。司法省民法編纂委員附で、法律取調事務兼勤となりました。財産編の人権部、財産取得編の翻訳を担当しました。
   両者の経歴の詳細は、前掲前田・七戸「『民法理由書』について」(*1)38頁以下を参照。

*5 前掲前田・七戸「『民法理由書』について」(*1)36頁以下。

2.画像の公開について

本書については、マイクロフィルムが製作され、そのマイクロフィルムを原本とした白黒画像が、国会図書館のウェブサイト(*6)や復刻版書籍(*7)で公開されていますが、原本には、墨書・朱書による訂正が記入されていることなどから、白黒画像での公開は、読みやすさという点では必ずしも満足のいくものではありませんでした。
法情報研究センター(JaLII)は、この度、法務図書館の許可をいただいて、原本全頁のカラー撮影をしました。

*7 ボワソナード民法典研究会(編)『民法理由書(ボワソナード民法典資料集成 第2期 後期4 公布・後史)第1巻~第5巻』(雄松堂出版、2001年)

法情報研究センター(JaLII)では、法令翻訳辞書の開発・改良の研究のため、さまざまな時期の法令データとその翻訳を収集、データ化する作業をすすめていますが、本書は、仏文の理由書と共に、現行の法典がどのように創られていったかを示す良い資料であり、民法の研究者にとって非常に有用なものであることから、作成した画像データを見ていただけるようにします(*8)。

*8 本書の画像作成と公開について、格別のご配慮をいただいた、国立国会図書館支部法務図書館に、厚く御礼を申し上げます。

公開する画像は、PDF形式の画像で、ファイルサイズを考慮して分割してあります。
なお、前述のように、本書原本は袋綴じの写本で、製作から長期間経過していることから、今回の撮影にあたっては、資料破損の可能性を考慮して、あえて間紙(あいし。薄紙の撮影などの場合に、裏面の文字が写ることを避けるため、撮影頁の下に置く紙)を挿入しない撮影方法をとりました。その結果、頁によって、裏面の文字が目立つ箇所があります。

3. 検索結果のご利用について

 再利用の際は、出典の表記をお願いいたします。
 検索画像の改変、商業目的での利用は、ご遠慮ください。

4.その他

本件画像データ及び画像検索・閲覧システムの作成には、
  特別経費
  「日本法令の国際発信を支える法学・情報科学融合研究の推進」(平成22年-27年度)
に基づく補助金の一部を使用しました。

2013年3月29日

名古屋大学大学院法学研究科
附属法情報研究センター(JaLII)

名古屋大学大学院法学研究科
〒464-8601 名古屋市千種区不老町

pagetop