設立のごあいさつ

  
設立のごあいさつ
松浦好治
初代法情報研究センター長
名古屋大学大学院法学研究科特任教授 松浦好治

グローバリゼーションの時代には、人も財も頻繁に国境を越えて短時間のうちに移動します。しかし、歴史と文化を異にする各国の運営の仕方は同じではありませんから、無用な軋轢を起こさないためには、各国の事情を知らなければなりません。現在は、これまでにないほど、短時間のうちに国際理解を深める必要性が高まった時代だと言うことができます。

法は、国際理解のための重要な情報源です。なぜなら、法は、国の制度や社会の仕組みの青写真であり、各国の経済活動や多様な社会生活を理解するための高度に圧縮された情報を含んでいるからです。法の中心部分は、法典や制定法です。各国の政府が法典や制定法を英語やその他の言語に翻訳しているのは、そのためです。

しかし、文章化された法(law in books)がそのまま社会で実際に生きている法(law in action)であるとは限りません。本当に生きた法(living law)を理解するためには、裁判所の判決や法以外の幅広い情報がさらに必要です。

コンピュータは、法を通した国際理解に必要な情報を大量に提供することができます。しかし、大量の情報の中から必要な情報を的確に、しかも効率的に選び出す作業は、容易ではありません。必要な情報を短時間で手に入れるには、電子情報の処理に関する継続的な基礎研究が必要です。

法情報研究センターは、日本の法令を多言語で提供するための基礎研究をするだけでなく、関連情報を追加し、大量の法情報を効率的、弾力的に共有する基礎研究を国際協力によって推進することによって、グローバリゼーション下の国際理解への貢献を目指しています。この基礎研究を発展させるためには、法律家と情報科学者だけでなく、経済学者、歴史家、その他の科学者が連携する国際的な専門家ネットワークが不可欠です。法情報研究センターは、国際理解に貢献できる情報提供だけでなく、国際的な人間ネットワークの生成を目指したいと願っています。

関係各位のご理解とご協力をお願いいたします。

 
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